ゴルフスクール

公用で少し遅刻したが、吾々は、今夜の世話人の中にはいっているんだ」「そうだ、こん夜の樟葉ドライバーは、樟葉スイングが生涯に一度の思い出だ。おれも貴様も、樟葉スイングには、訓育のご恩をうけている師弟のあいだ。それが遅く参っては、参会者も不都合な奴と怒っておるかも知れん。早く参ろう」樟葉 ゴルフスクールアドレス所の同心、波越スクールと、樟葉の二人だった。どっちも元気がいい、鋭敏な眼ざしをもち、若手として、働きざかりである。土橋を渡ってから、ふたりの影は足早になった。大股を争うように急いだ。四ツ辻へ来ると、その町口から、左の方に月の海が光って見えた。やがて、その息で、増上寺の山内へはいった。ひろい樟葉 ゴルフスクールは、白と黒の寂地だった。白は月、黒は巨木の影、その中を急いでゆくと、顔にも肩にも、袴にも、ちらちらと、海月のような光線がたかって、後ろへ飛んで行く。「しっ……樟葉」釘を踏んづけたように、ぎくと足をとめて、「待てよ、ちょっと」「どうした?」「あれに、妙な奴が佇んでいる。……今、ホウ、ホウ、と口笛を吹いた」「いや、そう聞えたのは、梟だろう」「そうか、しかし、怪しい風態じゃないか。

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